Lists Hungarian Rhapsody No. 2 in C-sharp minor リスト ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調

リスト紹介したい曲

「ピアノの魔術師」と呼ばれたフランツ・リストが残した全19曲の『ハンガリー狂詩曲』の中で、最も有名かつ最も愛されているのがこの第2番です。重厚で哀愁漂う前半と、狂気的なまでに熱狂する後半の対比は、まさに「狂詩曲(ラプソディ)」の名にふさわしいドラマを持っています。また、アニメ『トムとジェリー』の有名なエピソード「ピアノ・コンサート(The Cat Concerto)」で使用されたことでも知られ、クラシックファンのみならず、世界中の人々の耳に馴染み深い名曲です。

作品の背景

この曲は1847年に作曲され、1851年に出版されました。リストはハンガリー(当時はオーストリア帝国の一部)の出身であり、幼少期から聴き馴染んでいた「ロマ(ジプシー)」の音楽に強い影響を受けていました。彼はこれらの民族音楽を「ハンガリーの音楽」として捉え、芸術的なピアノ曲へと昇華させようと試みました。

この第2番は、ハンガリーの政治家であり愛国者であったラースロー・テレキ伯爵に献呈されています。当時、リストがピアニストとしての現役活動から退き、作曲に専念し始めた時期の作品であり、彼の技巧と民族的アイデンティティが見事に融合した記念碑的な作品と言えます。

楽曲の構造と音楽的な特徴

この曲は、ハンガリーの伝統的な舞曲「ヴェルブンコシュ(募兵の踊り)」の形式を踏襲しており、大きく2つの部分に分かれています。

  1. ラッサン(Lassan) - 緩 冒頭、重々しい嬰ハ短調で始まります。これは「導入部」と「緩やかな舞曲」にあたります。低音の重厚な響きや、即興的な装飾音は、ロマの音楽で使われる打弦楽器「ツィンバロム」や、ヴァイオリンの語り口を模倣していると言われています。悲劇的で威厳があり、深い哀愁を帯びています。
  2. フリスカ(Friska) - 急 後半は嬰ヘ長調(後に嬰ハ長調)へと転じ、テンポが急速に上がります。最初は静かに始まりますが、徐々に熱を帯び、最後には嵐のようなオクターヴ連打と和音で圧倒的なクライマックスを迎えます。シンコペーション(リズムの強弱のズレ)が多用され、野性味あふれる躍動感が特徴です。

技術的難易度

ピアノ独奏曲の中でも屈指の難易度を誇ります。 リスト自身が稀代のヴィルトゥオーゾ(超絶技巧演奏家)であったため、演奏者には以下のような高度な技術が要求されます。

  • 広範囲な跳躍: 鍵盤の端から端までを一瞬で移動するような跳躍が頻出します。
  • 高速のオクターヴ連打: フリスカの終盤では、手首の柔軟性と強靭な筋力を要するオクターヴの連続が登場します。
  • 指の独立性: 複雑な装飾音や、メロディと伴奏を片手で弾き分ける技術が必要です。

また、フリスカの終盤直前には「カデンツァ・アド・リビトゥム(自由なカデンツァ)」という指定があり、演奏者が即興で技術を披露するパートが用意されています。ラフマニノフやホロヴィッツ、シフラ、アムランなど、歴史的な名ピアニストたちが独自の超絶技巧カデンツァを残しています。

この曲が愛される理由

なぜこれほどまでに第2番が人気なのか、その理由は「視覚的な面白さ」と「分かりやすいドラマ性」にあります。

  • エンターテインメント性: ピアニストの手が鍵盤の上を激しく飛び回る様子は、見ているだけで興奮を呼びます。まさに「見せるための音楽」としての側面を持っています。
  • ポップカルチャーへの浸透: 前述の『トムとジェリー』をはじめ、バッグス・バニーなどの多くのアニメーションや映画で使用されました。コミカルな動きと、曲の持つ「静と動」の急激な変化が完璧にマッチするため、子供から大人まで「曲名は知らなくてもメロディは知っている」という状態を作り出しました。
  • カタルシス: 哀しいラッサンから始まり、最後は爆発的な喜びで終わる構成は、聴く人に強烈な解放感(カタルシス)を与えます。

まとめ

フランツ・リストの『ハンガリー狂詩曲 第2番』は、単なる超絶技巧の練習曲ではなく、ハンガリー(ロマ)の民族魂と、ロマン派音楽の情熱が融合した傑作です。 その圧倒的なエネルギーと親しみやすいメロディは、時代や国境を超え、今なお多くのピアニストにとっての「挑戦状」であり続け、聴衆にとっては最高の「エンターテインメント」であり続けています。

楽譜

Youtube動画

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