テレビ朝日系ニュース番組『報道ステーション』の3代目オープニングテーマとして知られるこの曲は、ニューヨークを拠点に活動するジャズピアニスト、森田真奈美(Manami Morita)によって作曲されました。2011年4月から2016年3月まで使用され、疾走感あふれるピアノとビッグバンドのサウンドは、当時の番組の顔として多くの視聴者に鮮烈な印象を残しました。
作品の背景
『I am』は、2011年の番組リニューアル(古舘伊知郎キャスター時代)に合わせて書き下ろされました。当時、新進気鋭の若手ジャズピアニストとして注目されていた森田真奈美が抜擢され、番組の新しい風として「報道番組にジャズ」というスタイリッシュな組み合わせが実現しました。
タイトルの「I am」には、「自分は自分である(I am me)」という意味が込められており、自分の良いところも悪いところも受け入れ、バランスを取って生きていきたいという作曲者自身の意志や、「人それぞれ違っていい」という多様性への願いが反映されています。オープニング映像で流れる「赤い糸」のアニメーションと共に記憶している人も多いでしょう。
楽曲の構造と音楽的な特徴
ジャンルとしては、ピアノをフィーチャーしたコンテンポラリー・ジャズ/フュージョンに分類されます。
- 疾走感: 非常に速いテンポ(アップテンポ)で進行し、イントロからエンディングまで駆け抜けるような爽快感があります。
- リズム: 3連符を多用したフレーズや、ジャズ特有のシンコペーション(裏拍の強調)が、前のめりな推進力を生み出しています。
- 構成: ピアノの力強いリフから始まり、ホーンセクション(ブラス)が華やかに絡み合うビッグバンド編成のアレンジが特徴です。ニュース番組のオープニングらしい緊張感と、明日への活力を感じさせるポジティブなエネルギーが共存しています。
技術的難易度
ピアノソロで演奏する場合、一般的に「中上級〜上級」の難易度とされます。
- リズムのキレ: 速いテンポの中で、ジャズ特有のグルーヴ(ノリ)を維持し続ける必要があり、リズムが崩れないようにする高い技術が求められます。
- 運指と跳躍: 臨時記号が多く含まれる速いパッセージや、鍵盤上の跳躍が激しいため、正確な打鍵と指の独立が必要です。
- 表現力: ただ速く弾くだけでなく、アクセントを効かせたパーカッシブなタッチと、メロディを歌わせる表現力の使い分けが重要です。
この曲が愛される理由
ニュース番組のテーマ曲という枠を超え、日本のジャズ・インストゥルメンタル曲として広く親しまれています。 その理由は、「聴く人を鼓舞するエネルギー」にあります。1日の終わりにニュースを見る人々に「今日も一日お疲れ様」と寄り添うだけでなく、「明日も頑張ろう」と思わせるような力強さを持っています。また、キャッチーでありながら本格的なジャズの響きを楽しめるため、ピアノ発表会やストリートピアノなどでも、「かっこいい曲」として演奏効果が高い点も人気の秘訣です。
まとめ
森田真奈美の『I am』は、そのタイトル通り、自己肯定と前進する力を表現した名曲です。報道番組のテーマとしてお茶の間にジャズの魅力を広く浸透させ、放送終了から時間が経った現在でも、その輝きを失うことなく多くのピアノ愛好家や音楽ファンに愛され続けています。
